舞の海対曙~舞の海の三所攻め!~(1991年11月場所)


 今やすっかり解説者の顔となっている舞の海。そんな舞の海が現役時代に残した取組の中でも、特に有名な舞の海対曙をここで紹介したい。世紀の番狂わせの名の通り、相撲が決して体格だけじゃないということを痛感させられる一番となっている。後に技のデパートと称された舞の海の真骨頂がここにある。

1991年11月場所あらまし

 1991年は5月場所に千代の富士が引退しており、ちょうど貴乃花や曙といった新世代の力士へ時代が移り行くときである。そうした中で小兵・舞の海もまた、新たな時代を担う力士の一人として活躍せんとしていた。

 11月場所は舞の海が新入幕を果たしてから、まだ2場所目を迎えたばかりだった。対する曙も1990年9月場所が新入幕だったので、舞の海より1年先輩なだけで双方ともに幕内では、まだまだ新参力士という位置付けとなっている。

 だが、曙に至っては、身長203cm・体重200kg越えの抜群の体躯もさることながら、当時、角界を席巻していたハワイ出身の力士だったこともあり、その注目度は舞の海の比ではなかったことが伺える。一方、舞の海の体格は身長169・体重97kgの迷うごとなき小兵力士であり、別の意味で注目されていたことであろう。

 そして、センセーショナルは11月場所の10日目に起こった。舞の海対曙とまるで子供と大人の体格差のある両者の取組が組まれたのである。両者初顔合わせであり、注目の一番となった。

舞の海が三所攻めで曙を撃破!

 この日までに舞の海4勝6敗、曙5勝5敗とほぼ同じ成績。体格だけを考えると、とてもじゃないが舞の海は勝負にならない。恐らくほとんどの人が曙の勝利を予想したであろう。ただ、誰しもがこの小兵が如何にして攻めたて、あわよくば勝つかもといった期待が心の片隅にあったはずだ。

 取組は短いながらも非常に見応えあるものとなる。舞の海がやや後ろから構えて立ち上がったと思った瞬間、すぐしゃがみ込みフェイントを見せて、そそのまま一気に曙の懐に潜り込むことに成功。そして、舞の海はすぐさま左下手で回しを取り、反対の手で曙の足をしっかりとつかんでいる。極端にいえばこの時点で舞の海の三所(みどころ)攻めは成功して、勝利はほぼ決まったといえる。

 曙も負けじと右上手を取るも、舞の海がそのまま左足で内掛けを決める。初めの内掛けは曙に外されるも、舞の海は再び内掛けをする。そして、その2度目の内掛けで曙とともに倒れていった。軍配は舞の海に上がり、劇的な勝利となったのである。

 取組の決まり手は三所攻めではなく、内掛けとなるも、舞の海が三所攻めを見せつけた珠玉の一番となった。また、千秋楽を終えて、舞の海、曙ともに8勝7敗としたのだが、舞の海は先場所に続いて2場所連続で技能賞を獲得している。

 この見るものをアッと言わせた舞の海対曙は、小よく大を制した代表的な一番となり、舞の海の引退後も再々TVで放送されている。再び舞の海対曙のような番狂わせが起こることを期待したい。

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